水彩画で人物画を描いてみたいけれど、どこから手をつけたらいいのか分からない。
そう思ってはいませんか。
顔のバランスが崩れてしまったり、肌の色がなんだか濁ってしまったり。
人物画には、風景画や静物画とはまた違った難しさがあります。
私は美大を出ていません。
長い間、水彩画を描いてきたけれど、それは水彩絵の具が、子供にとって身近な画材であったことが一番の要因です。
そんな私でも描ける水彩画ですから、あなたにも描けます。本当です!
だから安心してください。
コツさえ押さえれば、人物画は決して難しいものではありません。
この記事では、道具選びから下描き、肌の塗り方、髪や服の仕上げ方まで、順を追ってご紹介していきます。
読み終える頃には、次にキャンバスに向かうときの手順が、きっと頭の中に描けているはずです。
一緒に、人物画の世界を覗いてみましょう。
Contents
水彩画で人物画を描く前に知っておきたい基本
まず最初に、人物画を描き始める前に知っておくと安心な、水彩ならではの特徴とつまずきやすいポイントについて踏み込んでお話しします。
いきなり筆を持つ前に、少しだけ全体像を掴んでおきましょう。
人物画が他の水彩画(風景・静物)と違う3つのポイント
人物画は、花や風景を描くのとは少し勝手が違います。
一つ目は、見る人が「顔」に敏感だということです。
少しのバランスの崩れでも、人の顔は違和感として伝わってしまいます。
二つ目は、肌の色作りです。
風景画のように緑や青をそのまま使うわけにはいかず、微妙な色の重なりで肌の質感を表現する必要があります。
三つ目は、髪や服など質感の異なる要素が一枚の絵の中に同居することです。
肌はなめらかに、髪は柔らかく、服はハリを感じさせる。
この描き分けが、人物画ならではの面白さでもあります。




初心者が人物画でつまずきやすい理由
初心者さんが人物の顔を描く上で戸惑いやすいのは、パーツごとに考えすぎてしまうことです。
目や鼻、口を一つひとつ丁寧に描こうとするあまり、顔全体のバランスを見失ってしまう。
これはとてもよくあることです。
顔は「パーツの集合」ではなく「一つの面」として捉えることが、実は近道になります。
もちろん丁寧に、一つ一つのパーツを描くことは大切なことです。
ただ、一つ描き終えたら一旦間隔をリセットし、少し遠くに紙を置いて、離れて見てみることをお勧めします。目だけ、鼻だけ、口だけ、が強調されすぎて違和感がないか、観察して見ましょう。
慣れてくると絵を全体で見られる癖がついてきますよ♪
人物画に必要な道具と画材選び
ここでは、人物画を描く上で揃えておきたい道具と、その選び方のポイントを具体的にお伝えします。
道具選びで悩む時間を減らして、その分描く時間に充てていただければと思います。
絵の具は透明水彩と不透明水彩どちらを選ぶ?
水彩絵の具には、大きく分けて透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)があります。
透明水彩は下の色が透けて見えるため、重ね塗りで肌の陰影や血色を繊細に表現するのに向いています。
一方、不透明水彩は発色がしっかりしていて、修正がしやすいという特徴があります。
人物画で肌の透明感やグラデーションを大切にしたい場合は、透明水彩を選ぶ方が表現の幅が広がります。
私が使っているのは常に透明水彩絵の具です。不透明水彩(ガッシュ)は、仕上げに強調したい部分、白や黒など少しはっきりさせたい部分があった場合に使います。
透明水彩も、思った以上に重ね塗りが可能で、その重ね塗りで先に塗った絵の具が透けることで、より繊細で自然で、美しい質感を表現することができます。
紙・筆・パレットの選び方
紙は、水彩紙の中でも中目(ミディアム)と呼ばれるタイプが、人物画のなめらかな肌の質感を表現しやすくおすすめです。
筆は、細かい部分を描くための小さめの丸筆と、広い面を塗るための平筆を、それぞれ1本ずつ用意しておくと安心です。
パレットは、色を混ぜる面が広いものを選ぶと、肌色のような微妙な色合いを作りやすくなります。



下描きで失敗しないための顔と体のバランスの取り方
この章では、人物画の土台となる下描きについて、顔のパーツ配置と体全体のバランスの取り方を詳しくお伝えします。
下描きは、完成の印象を大きく左右する大切な工程です。
顔のパーツ配置の基本ルール
顔を描くときは、まず輪郭を大まかな卵型で捉えることから始めます。
目は顔の縦の中央あたり、鼻は目と顎の中間あたり、口は鼻と顎の中間よりやや上あたりに位置することが多いです。
これはあくまで目安ですが、この基準を頭に入れておくだけで、パーツの配置が大きく崩れにくくなります。

体全体のプロポーションを崩さないコツ
体を描くときは、頭の大きさを基準にする方法がよく使われます。
一般的に、大人の体は頭の大きさの約7〜8個分の身長になると言われる比率が参考にされます。
この比率を意識しながら、肩幅や腰の位置をおおまかに決めていくと、全体のバランスが取りやすくなります。
- 体の中心: 股(クロッチ)の位置が、ちょうど全身の真ん中(2分の1)
- 肘の位置: 肘の位置は、ウエストやへそのあたり
- 手首の位置: 手首の位置は、股の付け根(恥骨のあたり)
- 手の大きさ: 手のひらは、顔(あごから生え際まで)を覆い隠せるくらいの大きさ
だいたいのあたりをつけて描きながら、これらを意識して整えると、不恰好になりにくいです。

頭の形を意識せずにそのまま髪を描いてしまうと絶壁になったり、腰の向きや胴の長さを無視すると人間らしくなくなることがあります。

着物なので、さらに胸は潰しました。
実際はこの時代(江戸時代初期)の帯はもっと細く、着方も違います😅
着せる服でその人の背景や性格も表現できますね
肌の色を作る基礎知識と塗り方の手順
この章では、人物画の印象を大きく左右する肌の色の作り方と、塗り重ねの手順まで踏み込んでお話しします。
肌の色は一色で塗るものではなく、何色かを重ねて作り上げていくものです。
肌色は何色と何色を混ぜて作る?
肌の色は、赤・黄土色・青の3色を基本に作ることができます。
赤みを足せば血色のよい肌に、黄土色を強めれば健康的な肌に、青を少し混ぜれば陰影のある落ち着いた肌色になります。
市販の「肌色」をそのまま使うのではなく、この3色を自分で混ぜて作ることで、その人物らしい肌の表情に近づけることができます。
ホルベインでは、肌色として二色の絵の具JAUNE BRILLANT no1、no2を販売しています。1の方が薄いですね。ご自分で作ることも可能ですが、この二色があると、基本の部分の色味が表現されているので、簡単なのではないでしょうか。
私もこの二色に、赤み、茶色、黒、青、などを足して、血色の良い健康的な肌や、日焼けした感覚、影などをかき分けて使うことが多いです。


頬・唇・血色感の出し方
頬や唇には、ベースの肌色よりも少し赤みを足した色を、ぼかしながらのせていきます。
血色を感じさせる赤を少量加えることで、肌に生き生きとした表情が生まれます。
赤を入れすぎると不自然になりやすいので、薄い色から少しずつ重ねていくことをおすすめします。
肌の色って、混ぜれば混ぜるほど深みが出ると思われがちですが、実は逆で、混ぜすぎると濁ってしまうんです。
私は「ちょっと物足りないかな」というくらいで筆を止めるようにしています。

陰影をつけて立体感を出すコツ
顔に立体感を出すには、光が当たる面と陰になる面をはっきり意識して塗り分けることが大切です。
中間色でぼかしながら繋ぐというよりも、ある程度「ここは陰」「ここは光」と割り切って塗る方が、初心者の方には描きやすい方法です。
陰の色は、肌色に青や紫を少量加えることで自然な影になります。
髪・服・背景を描いて人物画を仕上げる
この章では、顔の次に印象を左右する髪や服の質感の出し方、そして背景をどう扱うかまでお伝えします。
顔が主役だとしても、周りの要素が整うことで絵全体の完成度が上がります。
髪の質感を出す塗り方
髪は、一本一本を丁寧に描くのではなく、大きな束として面で捉えることがポイントです。
ベースの髪色を塗った後、乾く前に少し濃い色を流し込むようにすると、自然な束感と艶が生まれます。
髪の生え際は特に、水分量を調整しながら柔らかいタッチで仕上げると馴染みやすくなります。

髪にグレーで下塗りをした段階です。

漫画寄りのイラストなので、髪に光沢を出しました。
服のシワと陰影の描き方
服のシワは、体の動きに沿ってできることが多いため、まず体の構造を意識しながら大きな流れを描きます。
シワの陰影は、肌の陰影よりもコントラストを強めにつけることで、布の張りや柔らかさを表現できます。
色は素材によって使い分け、綿素材ならマットに、シルクのような素材なら光を反射する明るい部分を強調すると質感の違いが出ます。
背景を足すか足さないかの考え方
背景を描き込むかどうかは、人物をどう見せたいかによって変わってきます。
背景を省略して余白を活かせば、人物そのものに視線を集めることができます。
反対に、背景を描き込めば、その人物が過ごす世界観や物語性を伝えることができます。
私は人物その人だけでなく、その人に関する情報を背景として表現することが多くあります。
女性ならばその人が好きな花、その人のそれまでの人生を表現できるような花や風景、動物。男性も、彼の住む世界を可視化した風景を描きます。
見た人がどう受け取るかは全くその人の自由なのですが、どう見て欲しいか、どう感じて欲しいか、背景を描くことで工夫することも大切ですよね😊
人物画を描くときにやりがちな失敗と注意点
この章では、人物画を描く途中で起こりやすい失敗と、その対処法について具体的にお伝えします。
失敗のパターンをあらかじめ知っておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。
色を混ぜすぎて肌がくすんでしまう原因
肌の色を作るとき、パレットの上で何度も色を足していくと、だんだんと濁った色になってしまうことがあります。
これは、絵の具を混ぜる回数が増えるほど、色の透明感が失われていく水彩の性質によるものです。
濁りを防ぐには、パレットで完璧な色を作ろうとせず、紙の上で色を重ねながら調整していく方法がおすすめです。
水分量の調整に関する注意点
水彩画は、筆に含ませる水の量によって表情が大きく変わります。
水が多すぎると色が薄まりすぎて輪郭がぼやけ、少なすぎると筆の跡が強く残ってしまいます。
紙が乾いているか湿っているかによっても仕上がりが変わるため、練習を重ねながら自分の中で水分量の感覚を掴んでいくことが大切です。
水彩絵の具の良いところは、「水で調整できるところ」だと思います。
濃すぎた!と思っても、水を含んだ筆で、薄くすることができます。
影に当たる部分、描く対象のはじから塗り始めると、濃い部分も陰影の一部になるので目立ちません。
水が十分乾くと、思った以上に塗った色が薄く感じられることも多いので、そこは恐れず、丁寧ながらも一気に塗ってしまうこと。
躊躇うことの方が失敗を招きます!
水彩人物画がもっと上達するための練習法
この章では、日々の練習に取り入れやすい人物画の上達方法についてお伝えします。
繰り返し描くことでしか身につかない感覚もありますが、練習の仕方次第でその効率は変わってきます。
モデルを見て描く練習の取り入れ方
実際に人を見ながら描く練習は、写真だけでは掴みにくい立体感や空気感を養うのに役立ちます。
家族や自分自身を鏡で見ながら描くことも、身近な練習方法の一つです。
短い時間で全体を捉える練習を重ねることで、観察力とスピードの両方が鍛えられます。
写真を参考にするときの注意点
写真を参考にする場合は、著作権や肖像権に配慮した上で、自分で撮影した写真やフリー素材など、使用が認められているものを選ぶことが前提になります。
写真はあくまで参考として使い、写真の通りに写し取ることよりも、自分なりの解釈を加えることを意識すると、絵に個性が出てきます。
まとめ|水彩画の人物画は基本を押さえれば誰でも描ける
ここまで、水彩画で人物画を描くための道具選びから、下描き、肌の塗り方、仕上げ、そして練習法までをお伝えしてきました。
人物画は難しく感じられがちですが、顔の比率や肌色の作り方など、基本となる考え方を知っているかどうかで、仕上がりは大きく変わってきます。
一枚一枚、丁寧に描き重ねていくことで、少しずつ自分らしい人物画に近づいていけるはずです。
もちろん花や風景画、そのほかの画題も同じことが言えますが、人物画を描くとき、「人物」と一言で括れるほど単純ではないと思います。
子供なのか、少女なのか、少年なのか。大人なのか、老人なのか。百人の人物がいれば、背景も人生も百通りです。
家族や親友のように、恋人のように、描く人物を愛でてみてください。
絵に深みが出てくるでしょう。
私自身、はじめから上手く描けていたわけではありません。何枚も描いていくうちに、少しずつ「こう描けばいいんだ」という感覚が掴めるようになってきました。
焦らず、楽しみながら描いていただけたら嬉しいです。
よくある質問(FAQ)
Q. 水彩画で人物画を描くのに、特別な画材は必要ですか?
A. 特別な画材は必要ありません。
透明水彩絵の具、水彩紙、丸筆と平筆、パレットがあれば十分に始められます。
Q. 人物画は風景画よりも難しいですか?
A. 難しさの種類が違うと考えていただくのが近いかもしれません。
風景画は色数や構図の自由度が高い一方、人物画は顔のバランスなど、見る人が違和感を覚えやすい部分があります。
ただし、基本のポイントを押さえれば、どちらも同じように楽しんで描くことができます。
Q. モデルがいなくても人物画の練習はできますか?
A. はい、可能です。
鏡に映る自分自身を描いたり、著作権に配慮した参考写真を使ったりすることで、モデルがいなくても練習を重ねることができます。
Q. 肌の色がうまく作れません。何かコツはありますか?
A. 赤・黄土色・青の3色を基本に、少しずつ配分を変えながら試してみることをおすすめします。
パレットの上で完璧な色を目指すよりも、紙の上で色を重ねながら微調整していく方が、自然な肌色に近づきやすいです。

どんな画題でも、繰り返し描くことで上達することは間違いないです! 楽しんで、着実に人物画を制覇していってくださいね♪
律でしたm(_ _)m








律です♪ 水彩画を描いています!